そんな訳で、海辺での生活が始まった。
・・とは言っても、仕事も決まっておらず、
生まれも育ちも東京の私には、知人のひとりもいない。
26歳独身女性のこの状況、
「崖っぷち」といえなくもなかったが、
「何も考えないためにこの地へ来た」私は
それを忠実に守り、ある日訪ねて来てくれた
友人数名と、夜の街へ繰り出した。
鎌倉・小町
と、あるBarで、大いに盛り上がっていると
一人静かにグラスを傾ける男性が・・
*実際はポロシャツか何か
「ん? 一人? この辺の方ですか~?」
酔うと図々しく、誰にでも話しかける私たち。
すると、傍にいた店主が
「この方、〇〇寺のお坊さんで、オサムちゃんって
いうんですよ。今はこんなにヘロヘロだけど、
ホントは立派な方なんだよ。」
常連で、気心が知れているのだろう。
おどける様な口調で紹介してくれた。
物腰が柔らかく、思慮深い目をしたオサムちゃん。
私たちはすぐに打ち解け、いろいろなおしゃべりに
花を咲かせた(物静かな彼が、私たちのくだらない冗談に
ニコニコと付き合ってくれていただけ・・とも言う。)
そんな彼が、突然大きな声を出して周りの話を
遮ったのは、私が
「最近、東京から来て、海のそばに住んでいる。」
と話した時だ。
「あのね~!いるんだよ~、そういう娘!!
いきなり何もかも投げ出して、都会から海へ来る娘!
業を背負ってるんだよな~。」
一同、しばしの沈黙・・
(今でいうところの地味に引く~)
「私? それ私の事?」
「いやいや、ごめん。君の事じゃないよ。
僕が言ってるのは、例えば今ある仕事をやめて、
住んでいる部屋を引き払ってまで来ちゃうような子。
それも本当の海っぺりにね。」
ってそれ、まさしく私の事だよ~~
(2)へ つづく
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