(1)からの続きです
「そ、それ、まるっきり私の事なの。」
すると、彼はなぜか強く否定して
「いいや違うよ。例えば君、都内にいながら
海の景色が頭から離れなくなったり、
涙が溢れたりなんて事なかったでしょう?
だいたい海のそばってだけで、目の前じゃないよね?」
ふと、周りを見ると、友人たちは、人ごととばかりに
すでに別の話題で盛り上がっている。
私は一人、彼に向き合うと
それまでの生活を捨ててまで、ここに来たのは
ある時期から、海の事が頭から離れなくなり、
海を想うと胸が苦しくなって、涙が止まらなくなった事、
その感情が日を追うごとに強くなって
抑え込む事が出来なくなり、周りの人の反対を押し切って
仕事も辞めて越してきた事・・
今までの経緯を洗いざらい話した。
「いいかい? これから僕のいう事をよく聞くんだよ。」
私の話に、じっと耳を傾けていた彼が
今までとは違う真剣な口調で言った。
「人は生きていると、いろいろな罪を重ねてしまうんだ。
それが心に積もってしまって、
今、君はその重みに耐えられない状態なんだ。
だから海に助けを求めに来たんだよ。」
「いろいろな罪?」
「うん。でも、そんな大したことじゃない。
誰もが抱えているものだよ。
不思議な事に、殺人や強盗、
それにこれは場合にもよるんだけど、
不倫の様な重い罪を犯す人はそうはならないんだ。
海に来るのは、ひとつひとつは取るに足らない罪
それをたくさん犯した人の特徴なんだよ。」
(思い当たるフシあり過ぎ・・・)
「じゃあ、海辺に住んでいる人は皆、罪深いの?」
流れからいって、ごく真っ当な質問だと思ったが、
「そんな事言ったら、世界中の漁師さんも、
海が好きで、一家で越して来る人も、皆悪い人になっちゃうねぇ。」
と、オサムちゃんは、さもおかしそうに笑った。
「まあ、人は誰しも何かしらの罪を犯しているものだよ。
海はそういった垢を洗い流して、
人生をリセットしてくれる力があるんだ。
人間は、どこかでそれを知っているって事。
君は君の意志でここに来たって事だよ。
幸せになりたい気持ちが人一倍強いんだね(笑)」←なぜか
ここでまた笑われる・・
(3)につづく
この記事へのコメント
続編、楽しみにしております!!
ありがと♡