2月21日(火)、平日とは思えない超満員の東京ドームでプロレスラー武藤敬司の引退記念大会が行われました。
娘とともにテレビに齧りついて迎えた引退試合のはじまりは、その軌跡を辿るように沢山の過去の入場曲が流れ、姿を現す前からすでに鳥肌が止みませんでした。
最後のコールを受け、最後のゴングが鳴る。
対戦相手は会場のお客さん、そして画面越しに見守る全ての人と同じく武藤敬司を愛し憧れた新日本プロレスの内藤哲也。
それ故の忖度なしのヒリヒリする試合にいつしか声も大きくなり、武藤敬司がドクターストップにより封印されたムーンサルトプレスを繰り出そうとコーナーに上った時には「止めろー!止めてくれ!」とふたりで泣きながら絶叫していました。
結果は内藤哲也の勝利でしたが、引退試合にも関わらずトップを走る選手を何度も追い込み、そして終盤には内藤哲也が武藤敬司の技であるシャイニングウィザードを繰り出すなど、愛と闘志の溢れる素晴らしい試合でした。
この試合について、いや武藤敬司について語り合いたい方、ご連絡をお待ちしております。
最後に、花道を引き上げる前に古舘伊知郎が武藤敬司に贈った詩を転載します。
山梨県富士吉田市に生まれし、一人のおのこ。入門から半年余りで、あの月面の奥義を身につけて、気がつけばアメリカマット界を席巻していた。
一体、プロレスラブとはなんなのか!この男に二元論は通用しない。ストロングスタイルかアメリカンプロレスか。ベビーフェースかヒールか。はたまたプロレスか格闘技か。全く通用しない。思えば昭和、平成、令和。時代は移ろっても、技、試合のありよう、観客の声援スタイルが変わろうとも、一貫してこの男は二者択一を超えて、格闘芸術をつくってきた。
作品を作るとき必ず削られていく。両の膝に人工関節を埋め込んでたどってきた、いばら道。邪心は削られたのか。団体を渡り歩き、まばゆいスポットライトを浴びながら、常に志半ばで逝った橋本を思い、プロレスに殉職した三沢を抱き、昨年亡くなった猪木を仰ぎ見ながら戦ってきた。もう限界なんて、とっくに過ぎていた。しかし限界を超えてもなお輝き続けた夢物語。そろそろ今夜がお開きか。
そうこれ、昭和プロレスの終焉(しゅうえん)なり。さあ、ザ・ファイナルカウントダウン。武藤、この610文字に愛を込めて、今積年の思いを込めて、さよなら、ムーンサルト!
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