少年A君とB君は将棋のスーパースター藤井四段を目指して、ライバル争いをしてきましたが、双方とも実力も互角で大の負けず嫌いのため、負ければその悔しさは大変なもので、それだけメキメキと成長を遂げてきました。
しかしある時どうしても勝ちたいと思ったB君は、A君がちょっとよそ見した隙に盤面のコマを動かし、それが決定的な原因でB君が勝つことができました。
それ以来B君はズルすれば簡単に勝つ術を覚え、連戦連勝となりました。
その時B君は重要な過ちを犯していることに気づきませんでした。
そのひとつはズルを覚えた瞬間から、成長はストップしてしまったことです。
実力は勝ったときより、負けたときの悔しさと挫折感の中から生まれるからで、真正面から取り組み、愚直に戦い続けることこそ実力向上の一本道だったからです。
こしてもうひとつの決定的な不幸が訪れました。
A君は何回か戦ううちにB君が不正をしているのではないかと見抜き、B君との戦いを避けることになりました。そしてその噂が連鎖反応的に他の将棋仲間にも広がり、「将棋仲間の風上にも置けぬ人物」としてレッテルを貼られ、B君は将棋だけでなく、人として後ろ指をさされる暗い青春を過ごすことになったのです。
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今日本を代表する世界的企業にもB君のような不正が続いています。
神戸製鋼はデータを改ざんし、その不正な商品がボーイングの旅客機、トヨタや日産の自動車、原子力発電所にも使われていたのです。
東芝の会計の不正問題の発覚が、社の分割身売りにまで発展しました。
日産自動車は、過去にさかのぼり無資格の従業員が車体検査を行ってきており、膨大な数の車のリコールによる再検査が余儀なくされています。
東レもデータ改ざんが発覚し、それも経団連榊原会長の社長時代に起こったと言いますから、あきれてしまいます。
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日本企業の世界に誇るブランド力は、高い信頼性によってつくられたものです。
そこまでやらなくてもというクソ真面目と勤勉さによってつくられた「高品質」という信用は、金儲けのために、自分たちの都合のいいように正義を捨てたそれらの企業によっていとも簡単に崩れ去ろうとしているのです。
日本のある鉄道の電車が、運転手の勘違いで発車時間より20秒速く出発したことのお詫び広告が掲載されたのですが、それが外国のマスコミに取り上げられ、「日本ってなんと(くそ)真面目な国なんだろう!」いう論評でしたが、その裏には日本へのゆるぎない尊敬と信頼を感じました。
私たち日本人が必死な思いで守ってきた正義こそ、ゆるぎない「日本ブランド」を作って来たし、これからも磨いていくと思っています。
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