巻頭の絵の「披露山庭園住宅」は日本屈指の高級住宅地ですが、そのままダイレクトに描けば、平板な絵になって面白味がないため、絵の魅力を表出する方法として、絵の前面に高級住宅地にふさわしい子供を表現することにしました。
言ってみれば、何不自由なく育った良家の子供、かわゆくて品があり、素直でおおらか、そんな子供を添えることを構想しました。
しかしそんなイメージの子供が思い当たらないだけでなく、肖像権の問題も考えなければなりません。
そこで苦し紛れに思いついたのが1枚の写真でした。
わが家の押し入れの奥にしまってある50年前のほこりをかぶったアルバム。その中から「あった!あった!」とようやくお目当ての写真を見つけ出しました。
それは5歳のころのわが息子のモノクロ写真で、それを元に描いたのがこの絵です。
あれから50年、今の息子は55才のおっさんになり、東京で小さなIT会社を経営する脂ぎった中年となっています。
一方、我が老夫婦は「あの頃はほんとにかわいかった!」と現実を直視せず、50年前の古き良き時代を懐かしむばかりなのです。
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